Stage4の化学療法は上記の通り、フルオロウラシル系とプラチナ系のダブレット(2剤併用レジメン)が第一選択になります。
これをPD(治療下でのがんの増悪)になるまでの間、何度も継続していくわけですね。
ではSP・SOX・XP・XELOX・FOLFOX…これらのどれが良いのでしょうか。
まず基本とされているSP療法(S-1+CDDP)ですが、SPIRITS-Studyが根拠とされています。
*SPIRITS-Study
*SPIRITS | 奏効率(RR) | 無増悪生存期間(PFS) | 全生存期間(OS) |
S-1療法 | 31% | 4.0ヶ月 | 11.0ヶ月 |
SP療法 | 54% | 6.0ヶ月 | 13.0ヶ月 |
ちなみにSP療法は5週1サイクルで、S-1を3投2休、CDDPをday8という治療ですが、SOS-Studyというものがあり、S-1を2投1休にして3週1サイクルにした治療法もあります。PFSは3週の勝ち、OSは同等。母集団にちょっと気になる点はあるものの、十分に同じように使える治療と考えます。
SOS−Study:Ryu M-H., et al. Ann Oncol, 2015; 26(10): 2097-2101
XP試験(カペシタビン+CDDP)は海外の標準治療であり、後述するToGA−Studyなどでも安全性と有効性は確認されています。
HER2陽性胃癌(IHC3+またはIHC2+かつFISH陽性)についてはToGA試験においてトラスツズマブの上乗せ効果が認められているので、これに従う形になります。
*ToGA-Study
*ToGA | 奏効率(RR) | 無増悪生存期間(PFS) | 全生存期間(OS) |
SP or XP | 35% | 5.5ヶ月 | 11.1ヶ月 |
SP or XP +Tmab | 47% | 6.7ヶ月 | 13.8ヶ月 |
副作用が違ったり、腎機能の影響の違いだったり、Hydration(水分負荷)の有無なんかも違ってきますが、実はオキサリプラチンレジメンはシスプラチンレジメンより推奨度が1ランク下がります!
理由を考えてみましょう!
・XELOX療法(カペシタビン+L-OHP)
REAL-2 Studyでシスプラチンに対する非劣性が証明されたため、1st lineの仲間入りをしたXELOX療法ですが、1段階推奨レベルが低いのは以下の理由があります。
・海外で行われた試験であり、日本人の参加がないこと。
・ECF療法という海外での胃がん治療に使われるエピルビシンを上乗せしたレジメンも含まれていたこと。
・ハザード比は0.92(95% 0.80−1.10)
このため、XELOXはXPに比べるとちょっと引いたポジションに置かれたわけですね。
・SOX療法(S-1+L-OHP)
G-SOX StudyでSP療法への非劣性を検証され、それが根拠となっています。
*G-SOX | 奏効率(RR) | 無増悪生存期間(PFS) | 全生存期間(OS) |
SP | 52.2% | 5.4ヶ月 | 13.1ヶ月 |
SOX | 55.7% | 5.5ヶ月 | 14.1ヶ月 |
そのとおり!数字上はほとんど同じように見えたのですが、これは非劣性試験。同じかどうかは非劣性マージンマージンとハザード比をみてみましょう。
OS: HR=0.969 95%Cl:0.812-1.157 非劣性マージン 1.15
PFS: HR=1.004 95%CI:0.840-1.199 非劣性マージン 1.30
つまり、PFSでは同じだったけど、やや生存期間でSPと一緒とは言い切れなかったわけですね。
がんを大きくしないのも大事ですけど、人間やっぱり死にたくなくてがん治療するわけで、がんが小さく出来るかどうかは最大最終の目標じゃないわけですからね。なんといってもOSが強いと。
ですが副作用はやはりSOXのほうが制御しやすいという判断のもと、推奨度2ながら1st lineに加えられたというわけです。
FOLFOX療法(5−FU+l-LV+L-OHP)は日本人のデータはないものの、世界的に標準治療と位置づけられていることから加えられました。前向き試験のデータはないのですが、使用実績もあることから保険承認とはならないものの使えることになっています。
さて、2nd line以降は簡単です。
以前まではPTX単剤、CPT単剤、DTX単剤などを使っていた2次治療以降ですが、2つの臨床試験で今の形に収まっています。
*RAINBOW | 奏効率(RR) | 無増悪生存期間(PFS) | 全生存期間(OS) |
PTX | 16% | 2.9ヶ月 | 7.4ヶ月 |
PTX+RAM | 28% | 4.4ヶ月 | 9.6ヶ月 |
*ATTRACTION-2 | 奏効率(RR) | 無増悪生存期間(PFS) | 全生存期間(OS) |
NIVO | 11.2% | 1.61ヶ月 | 5.26ヶ月 |
プラセボ | 0% | 1.45ヶ月 | 4.14ヶ月 |
上記の根拠から、この治療方法が推奨されているわけですね。
プラスαのお話として…
◎ CDDPとL-OHPは交差耐性がないため、CDDP治療後であってもL-OHPレジメンは使えます。PSが許容されるならSP後4th lineでXELOXを使うということも考えられますね。
◎ 胃がんは時として経口摂取不可という状況にもなるがんです。注射薬のみですべて完結できるFOLFOXが治療選択肢にあるのは意味のあることですね。
◎ その他レジメンとして、条件付きで5−FU+CDDP、SOX+Tmab、XELOX+Tmab、Nab-PTX、RAM単剤、DTX単剤、CPT単剤、PTX単剤などもあります。状況とPSに応じて、使える場合は色々使っていくことも検討されます。
とりあえず、こんなもんでしょうか!
不明点等あれば答えられる範囲で答えるのでコメントいただければ幸いです!次は何にしようか…尿路上皮がんあたりにしようかな〜。
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